彼はゴルフが好きで、休日はよく練習に付き合った

ゴルフをしない私にとっては、夏は暑いし冬は寒い中、2時間程度の練習に付き合っていた

よくフォームの確認をしたいからと、後ろから動画撮影を頼まれた

彼のスマホで撮影したり、私のスマホを使ったりしていた

彼の姿が見れるかも？

と、保存された動画を探してみたけど…

1つも残っていなかった

全て削除してしまっていた

彼の写真も1枚も残っていない

残っているのは、一緒に行ったスカイツリーと、鎌倉の大仏の写真だけだった

休日は彼の事ばかり考えてしまって、時間だけが無駄に過ぎいく

彼の事を忘れる時間が欲しくて、明日はおじさまとディナーの約束をしたけど…

彼と比べてしまい、寂しくなるだけかもしれない

ほんとに彼は誠実で優しかった

私を大切にしてくれていた

そんなことばかり考えている

2002年

出会った頃の彼は、「愛を求めるジプシー」と自分のことを笑いながら言っていた

奥さんを愛せず長くレスが続き、彼を愛していた奥さんは猜疑心の塊のようになっていたらしい

彼は癒しを求めて、出会い系サイトを時々利用して、私にもあるサイトで彼と出会った

電車で30分程度の場所に住んでいた事や、彼が当時は経営者で比較的時間が自由になった事もあって、数回のメール交換しお茶の約束をした

高級外車から降りて来た彼は、背が高くガッチリ体格でスーツがよく似合っていた

お茶だけの約束だったけど、彼がもう少し話しをしたいと、店を替えて軽く食事をした

翌日から彼から何度もデートのお誘いがあり、約1ヶ月後の5月の中頃、2度目のデートをした

デートを重ねる毎に彼が好きになっていき、彼の事を色々と知りたくなった

私と出会う前の彼は、何人もの女性と出会い遊んでいたと言っていた

誰も好きにはなれず、体だけの関係だったと

相手が本気になったり自分が飽きれば、アドレスを変更し連絡を取れないようにしたと

電話番号どころか、本名も教える事もほとんど無かったと

自分を愛してくれている奥さんを愛そうと、努力したが出来なかったと

愛を求めるジプシーだったと…

笑いながら…

付き合い始めて数ヶ月後、彼は私に一目惚れだったと言った

ストライクゾーンのど真ん中だったと

2003年

彼は奥さんと離婚し、私だけの彼になった

そして彼がいなくなった今、私が愛のジプシーになっている

15年前の彼の言葉を思い出し、ふと思った

おじさまとディナーの約束をして4日

約束はしたけど、待ち合わせ場所も時間も何も決めていなかった

自分から連絡する気にもなれず、そのままにしていたら、今日メールが来た

今度は前回乗って来たポルシェではなく、ベントレーで来るらしい

車が好きだと言っていたけど…

高級車ばかり…

何て贅沢な趣味なんだろう

車好きの彼が聞いたら羨ましがりそう…

翌日のランチまで一緒に居たいと言われた

買い物をし、ランチに行こうと…

ディナーまではOKしたが、翌日のランチまではまだ考えている

彼以外の男性は、まだ体が受け付けそうにない

私の心の中は大半が彼で占めていた

彼がいなくなって、心に空いた穴はかなり大きい事がよく分かった

彼が羨ましがるようなリッチなおじさま相手でも、今はまだ心の穴は埋められそうにない